2010年8月20日
関西のおみやげの定番、551蓬莱の豚まん。一個160円。
・・・
551という三桁の数字を言ってみる。
「何それ?」「郵便番号?」「リーバイスのジーンズ?」なんて答えてしまう人は非関西人。
「蓬莱の豚まん」と答えた人は関西人、あるいは博識で立派な方。
・・・
関西人に「肉まん」と言ったら、「えっ? ああ、豚まんのことな」といちいち面倒くさく訂正されるってことはご存知でしょう。とにかく関西人にとっては551といえば豚まん、豚まんと言えば551という話なのです。
というわけで、非関西人の方のために蓬莱の豚まんのイロハをちょっと語らせてもらいまっさ。


ちょっと甘めの、ぼってりした皮。タマネギと豚肉のシンプルな具。
これがなんと一日に14万個売れるそうですよ(@@;)。武道館の観客×14杯分のお客さんがハフハフかぶりついている計算でっせ。どひぇ~。
これこれ、この行列。新大阪の駅ビル内の店は、常にこんな感じ。といっても回転は速い。隣のクッキー屋さんが繁盛してないように見えてしまうのが気の毒(ふつうに売れてるのに)。
JR新大阪の駅には販売所が三箇所あり。作りたてホヤホヤが買えるのは新幹線の中央改札を出て左(東)へ40メートルほど進んだところにある店舗(ほかはたしかお土産用のチルド販売が中心)。
551の数字の由来は、創業者が「味もサービスもここ(55)がいちばん(1)、を目指そう」と店名につけたのが始まりとか。そもそもはカレーライス屋で、豚まんの誕生は創業翌年の昭和21年。
1個160円、4個640円、10個1600円と、たくさん買っても割引にはならないところがかえってわかりやすくて気持ちいい。シュウマイや餃子も売られてるけど、「シュウマイも必ず買う」という声は聞いたことなし。
その場で手作り→販売が基本。厨房のお兄ちゃんの手は一瞬たりとも休みまへん。
蓬莱の豚まんの隠れた魅力は、どっさりつけてくれる辛子の小袋。
手づかみで↓

っと入れてくれる。「辛子はいくつおつけしますか?」みたいなケチな会話はなし。
たとえば20個買ったある時は・・・
数えてみたら27個だった。
たのめばおてふき(ウェットティッシュ)もつけてくれる。「おてふきもらえますか?」で、これまたガサッとひとつかみで・・・
このときは9袋。豪快ですねん。
・・・
とーぜん我々も帰省のたびにゲット。姉が東京へ出張に来るときも、わざわざリクエストしなくても「これがおつとめ」とばかりに買ってきてくれます。
ただしねえ。蓬莱の豚まんにはひとつだけ困った要素があるんですわ。
それは―――におい。
できたてのほっかほかは「わて豚まんですねん」というにおいを放散するのです。

関西のローカル沿線の車内ではもはや当たり前のにおいで、車内の空気は「551含有率」が高いから、べつに問題ない。
しかしこれが新幹線車内となると・・・窓も開かず、扉も数十分おきにしか開閉しない半密閉空間で「わて豚まん、わて豚まん」と自己主張する生温かいにおいは、博多や広島からの乗客にとっては半ば暴力みたいなところがあり。
それゆえチルドという商品が開発されたのだとは思います。
が、しかし、「たとえ冷めても自分で温めるより店で加熱されたものがいちばんうまい」という信条を抱く我々は、なんだかんだいってチルドには手を出さないのであります。
同じ信条を持つ姉の東京行きには、だから下記のアイテムが必須となるのです。
① ブランドの紙袋
ずばり、目くらまし用。豚まんが入ってるとは想像しがたい「いかにも高級おブランド」であることが重要。
② 45ℓのペール用ポリ袋
豚まんの箱ごとくるんで、口をしっかり結ぶ。
・・・
これによって、「豚まんなんか持ち込みやがって」な視線はある程度回避できると姉は申します。
それでもやっぱり近くの席のお客さんには「誰かが豚まんを持っている」と気づかれる程度のにおいは漏れてしまうらしく、それゆえ姉は・・・
↑このような作戦で状況を撹乱し、東京までの2時間半を乗り切るんだそうな。
姑息な手段と思う方もあるかもしれんけど、私に言わせれば姉なりの処世術。エチケットをわきまえた模範的な大阪人やと誇りに思いますね。
・・・
蓬莱のホームページには、おいしい温め方や、豚まんをアレンジしたレシピなんかも紹介されています。http://www.551horai.co.jp/
カレーライスにもソースをかける父親世代はソースをつけて食べることが多いですが、私は辛子をべっとり表面にぬりたくってあとは何もつけない派。人によってけっこう違うんですよ、好みの食べ方が。
ここで、森家流に編み出した「蓬莱の豚まんのおいしい食べ方」をご紹介。
冷凍したものは蒸し器で蒸すのがいちばんうまいに決まってるけど、面倒ですやん。ふつうはラップして電子レンジでチンしますやん。
●電子レンジでの解凍方、うちの場合はこう↓

注:びしょびしょにしたらあかん。あくまでもサッが鉄則。冷凍のさいに巻きつけたラップははずす。耐熱容器で軽くふたをして、蒸気を逃すぐらいがちょうどいいと思う。
●食べごろを逸して冷蔵庫でパサついた場合↓
中高時代は、お弁当にもこれ↑が一品のおかずとしてよく入ってたもんです。
・・・・ ・・・
個人的は「何も足さない。何も引かない。温かいうちに食べるか、冷めたら冷めたで常温で食べるのがいちばん」やと思っておるのですよ。
でもまあ、中には・・・

↑こんな変人もおりますけどな。
・・・
大阪へお出かけの際は、ぜひお求めを。あるいは買ってきてもらいましょう。
通販もあるけどね。個人的にはやはり、新幹線でコソコソ運ぶプロセスがあればこそのおいしさや、という気がしますねん。
・・・・
蓬莱のアイスキャンデーの「あずき」は超名作。井村屋のあずきもうまいけど、ごめん、私の中では蓬莱の勝ち。最近「あたり付き」になった。今当たればキティちゃん蓬莱バージョンストラップがもらえるんやて。ふーん。キティちゃんね。
・・・
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2010年8月18日
関西の夏といえばこれでしょう。甲子園球場のかちわり氷。最近のはもう金魚すくいの袋みたいなきんちゃく型じゃなく袋にパックされております。頭を冷やすも水を飲むも、確かにこのほうが使い勝手がいいよね。情緒はちょっと↓だけどね。
・・・
みなさ~ん、お盆はどないしてはりましたか~?
私はいわゆる帰省組として、大阪・京都・名古屋をどわどわ―――っと廻ってきましたよ。
そーそー、そーですねん。関西育ちの私にとっては、まさにどんぴしゃの「ソウル・フード食文化圏」。堪能した「むっちゃ美味~!!」な数々を、ちょっと自慢させたって下さい。
・・・・
『一芳亭(いっぽうてい)』のしゅうまい
新大阪駅に着いたら→父の車で→大阪・ミナミ→船場センタービルへ直行、が定番コース。
『一芳亭』のしゅうまいのために決まってまんがなー!
5個310円。ほんのり黄色い、薄焼き玉子の皮が特長。エビ+豚肉+タマネギが具。絶妙、撃沈。こっ、これや~!
しゅうまい定食/750円。八宝菜定食とか、えび天定食とか、どの定食にも必ずしゅうまい5個がつきますねん~~♪
断言。一芳亭のしゅうまいは世界一うまい。香港で食べたぷりぷりのエビしゅうまいも上海で食べた蟹ミソしゅうまいもおいしかったけど、これはもはや「一芳亭のしゅうまい」という別格の1カテゴリーを築いております。
創業昭和8年(1933年)からの名物メニューってことは、父と同い年ってことか。若い頃から食べている父曰く「昔に比べてひとまわり小さくなったよーに思うけど、味は変わらへんわ」。
個性があるのに飽きない。ただうまい。そんな一芳亭のしゅうまいみたいな人間に、私はなりたい。

持ち帰り用15個950円、20個1270円。クール便での通販もあり。
難波・船場『一芳亭』↓
http://www.ippoutei.com/index.html
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京都祇園・円山公園『いもぼう』
約300年、元禄・享保の頃から続いて14代目という「さすがは京都どすなあ」な老舗。
この店の名物といえば、えび芋と棒だらを炊き合わせた、ずばり『いもぼう』。
甘辛いけどあっさりってところがいかにも京都どすなあ~。
棒だらといえば、母がおせち料理を作るたびに「棒だらは砂糖喰いの時間喰い。砂糖をいくら入れても足れへんし、時間も手間もかかるくせして、やわらかく仕上げるのは至難の業」と嘆いていたものだ。そうそう。母は正月早々家族から「今年ははずれやな」「今年はぼちぼち」なんてジャッジされてたんだった。
その棒だらがほっこりやわらかく、しかもえび芋が煮崩れてないのは驚異的。
とろろの海苔巻きは、ねっとりモノに目がない娘にヒット。さらに祇園豆腐、ゆばなどがつく「花御膳」3150円。

デザートに冷やしぜんざい。515円。生麩が入ってます。
「へえ、おおきに~」本物の京都弁やあ!
「○○風」「○○系」ではない、「ほんまもん」がひしめいているのが京都の素晴らしさ。いもぼうの店内にも、お手洗いに続く通路にいきなりこんな大木が生えていたりして「おおお、さすが京都やー!」。
京都祇園・円山公園「いもぼう」http://www.imobou.net/
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めはり寿司
高菜の浅漬けでびっちりくるんだおにぎり。三重と和歌山にまたがる熊野地方の郷土料理として有名だけど、これは滋賀県の多賀サービスエリアのお弁当コーナーで普通のおにぎりと並んでふっつーの顔で並んでおりました。これはやや小さめですが、もともとはソフトボール大のでっかさゆえにかぶりつくときに大きく目を見ひらいちゃうからとか、目をみはるほどおいしいからというのが名の由来らしい。中のご飯は山椒ちりめんだった。すでにスタンダードかもしれんけど、古来のめはりずしに言わせればニューウェーブやな。
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生八ツ橋、あんこなしの皮だけ。
多賀サービスエリアのレジカウンターで、売り切れ寸前の最後の一個をゲット。
こういう味をしみじみうまいと思うようになったのは、40すぎてからですわ。
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飛騨牛。霜降り~っ。
テレビ番組『ひみつの嵐ちゃん』に出ていた野菜たっぷり焼肉(赤坂『やさい村大地』)を義姉夫婦も観ていたらしく、「あれ食べたいよねー」と、スーパーで野菜をしこたま買い込む。サンチュに大葉やエゴマの葉やミョウガやカイワレ大根など、どっさり野菜に霜降り肉をちょっとという感じで巻き込んだら驚くほどすいすい口に入って、いつもの倍は食べてしまったなあ。
大葉は義父母が庭で育てたもの。スーパーで買えば1000円ぶんってほどの大葉をレタス並みの勢いで食べられて、超ハッピー♪
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ひつまぶし~♪
おひつに入ったうなぎのまぶしごはん。
名古屋(愛知)一帯の名物ですが、すでに全国区で有名なのでみなさんご存知でしょう。ふつうのうな丼とは違います。
温かいだし汁と
薬味(わさび・のり・万能ねぎ)がついてくる。
お茶碗によそった一杯目は、そのまんまいただく。
二杯目もそのまんまが正統派らしいが、そのへんはお好み。さっくり、かりかり。
次に、薬味を投じたものを。山椒もたっぷり。
そしていよいよ、だし汁を注いでお茶漬け状態でさらさらさらーっ。うひゃー♪たまらん。
炭火で焼いたうなぎが、大阪や東京のうなぎよりカリカリ香ばしいのが特長。関西ものでないところがちょっと悔しいねんけど(←たはは・・・)、ずばり、この店のひつまぶしは私が世界一好きな食べ物ベスト5に入ります。
かかみ野 蓬しん
岐阜県各務原市那加大東町9-2/電話→0583(82)3931
・・・
あともう一品、大阪のうまいもんと言えば忘れてはならんもんがありますんやけど、それについて語ると長なるんで次回に繰り越させてもらいまっさ。
ほなまた~。
・・・
甲子園の高校野球は去年は私も行ったんだけど、今年はソフトボール部員の中二の娘がじいちゃんにせがんで二人で行ってきました。野球少年好きな娘はもう萌え萌え。生で見る高校球児の投げる球は、はっきりいってすごいです。「かわいいなあ、みんな一生懸命やなあ」なんて言ってる場合とちゃいまっせ。

最近涙もろくなった、と姉。わかるわーと頷く妹。かつての母やおばの傾向に近づいてることを実感して、なんかちょっと嬉しかったりする。
関西に降り立つと、あっちこっち本物の「せんと君」だらけ。「坊主頭にツノなんかはやしよって、気っ色悪い」という父のブツブツ文句もあわせて、「おお、関西へ来たんや~」と妙なところで実感。賛否両論のすえ結局生き残ったせんと君、目ぢからあります。
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2010年6月5日
インド報告ルポの前に、ちょっと旬の話題に寄り道を。
どじゃーん。元気いっぱい、グリーン・アスパラガスが北海道から届いたものですから~♪
・・・・
札幌の義兄夫婦が送ってきたのです。
アニキ・貫田桂一(ぬきたけいいち)は北海道でフード・ディレクター(という謎の仕事)を生業としている男。畑や野山を歩き回り、生産者と語り合い、北海道のおいしい地産食材を探し回っている。今日我が家に届いたのは、そんな兄貴がイチオシの宝石みたいなアスパラガス。
・・・
嬉しいですよそりゃもう。ありがたいったらありゃしません。
ただね、心の円グラフを分析すると、じつは「嬉しい気持ちだけ100%」とは言い切れないようなところもあったりする。
わかってもらえますかね。

つまりこういうことですよ↓

お菓子や果物なら食べるだけ。でも野菜や魚介類といった素材系はそうはいかない。つまり「素材の持ち味を自分の調理で台無しにしたらどうしよう」・・・という類のプレッシャーがともなうということですね。
兄貴から生産者の心意気や苦労話を聞かされていればなおさら。だから今回も、ギンギンの集中力と祈りにも似た思いを抱いて台所に立ったわけです。
・・・
家族を食卓につかせる。
フライパンの湯がグラグラきたら、すかさず投入!
そしてグリーンが最高に美しく輝く瞬間を逃さず・・・
塩とバター。さあ、いただきます!
言うことなし。最高です。めでたしめでたし。
でもそのとき湧き上がってくるのはただ 「おいしかった」という感慨ばかりじゃなくて、なにやらひとつの責任やミッションをクリアーしたような清清しさだったりもするわけです。
「北の国の大地よ、私はあなたが育てた2010年の初夏のアスパラを上手に茹でて最高においしく味わったぞー! 」
えへ。こういう心情って、まったく理解できないって類のものじゃないと思うんですが、いかがでしょう?
・・・

なんとも贅沢、本日の娘のお弁当はアスパラが主役。目を射らんばかりのグリーン、これが自然の色だなんて、つくづくすごいねえ。

アスパラに同梱されていたバターは昔ながらの製法を尊重し丁寧に作られた逸品。産地が同じ食材同士は相性がいい、これもひとつの真実だと思うのです。(北海道の安全でおいしい野菜の専門店『アンの店』。このお店が扱う物はどれも本当においしくて体も喜ぶ。超おすすめです)
・・・
・・・
北海道のおいしいものと生産者の話題が盛りだくさんな貫田桂一(ぬきたけいいち)のブログ、ぜひいちどのぞいてやってくださいね。『シェフ貫田の北海道うまうま大辞典』 http://blog.gutabi.jp/special011/
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2010年3月20日
チェックのシャツのハイカラなオヤジさん(もといナイス・ミドル)は、イタリア料理通で知らぬ者はいない大御所、料理人の吉川敏明さん。柴田書店「専門料理」元編集長でフリー・エディターの河合寛子さんと、原稿の最終チェック中。ツーと言えばカー。というより、ツーと言えばカーカーカーと返ってくるのを河合さんがカーに凝縮する、見事なまでのリレーションシップ。
・・・・・・・・・
グルメではないが食べることは大好きな私にとって、「食の総合出版社/柴田書店」は憧れのアイコン的存在の出版社でありました。
それはもうずっと、初めて包丁をにぎって料理を覚え始めた大学時代から。
ノンノの[彼氏が喜ぶ手料理特集]でもなく、アンアンの[女ともだちと楽しむエスニック風ブランチ]でもなく、パリッとのりのきいた白衣をまとった料理人が数秒のタイミングに集中して火を入れるプロの世界=柴田書店の刊行物。料理業界の哲学・美学はもとより、掲載されている広告にさえ「うぉぉプロフェッショナル!」と、いちいち感じ入ったものでした。
でも考えてみたら、料理人を目指したわけでも一流店を食べ歩く財力もなかったのに、なんで私は柴田の本をちょくちょく買ってたんだろう。
そうか。酔いしれたかったんだな。
[わたくし、柴田の雑誌をレジへ持っていくんですの][部屋の本棚に柴田の本がささってますの]な自分に。
でもまあこんな愚かな購読者層もいてこそ、柴田書店の柱の一本や二本は立ってるんじゃないかと開き直るのであります。
・・・・・・・・・
そんな柴田書店さんから仕事のオファーを頂いたのが数年前(嬉しかったあ)。
そして今回久しぶりにイラストを描かせてもらったのがこれ↓
『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』(吉川敏明・著/柴田書店/税別1600円)
・・・・・・
へっへっへ、みなさま。はっきりいって超面白いんですよ、この本。
もちろん自分が関わったという贔屓目は20パーセントくらい入ってはいるんですが、残す80パーセントは読者目線からおすすめするのです。
著者の吉川氏は、西麻布の伝説的有名店『カピトリーノ』の元オーナーシェフ。現在は小田急線の経堂で『エル・カンピドイオ』という小さなイタリア居酒屋を奥様ときりもりしておられる。
1946年生まれ。ローマで数年間修行して帰国したのが1969年ということは、まだ日本人は喫茶店のケチャップ味のナポリタンかミートソースしか知らなかったような時代。吉川氏はそんなころから本物の現地の味を、おいしさを、日本にもたらしていった先駆者なんですね。
講演会や著述活動にも力を注いできた吉川氏。著書『イタリア料理教本(上・下/柴田書店)』は発刊以来、若き料理人のバイブル的存在となっているそうな。
・・・・・・
それにひきかえ。
私にとってのイタリア料理は「おいしい~」か「はあ、こんな感じですか」の二種類で、専門知識なんてないに等しい。
だから柴田書店の編集者・網本祐子さんから今回の仕事の打診を頂いたときは、正直に白状したのです。
「あのー、私、イタリア料理についてぜんっぜん詳しくないんですけど」
さらに↓

すると網本女史、ひとこと↓

こう言わせりゃ、こっちのもん。
というわけで原稿を読ませていただいたのです。
それがまあ、面白いのなんのって。目からウロコの連続。
・・・・・・
パスタを食べるときにスプーンを添えてクルクルするのは、えええっ、田舎もの?
(やってました)
パンにオリーブオイルをつけて食べるのは、貧乏人?
(喜んでやってました)
エスプレッソをダブルで頼むのは野暮?
(お茶室で抹茶を[ダブルで]と言うに等しいんだってえええ…???)
・・・といった知ってるようで知らない作法に始まり、よりスマートな楽しみ方、地域によるアルデンテの違いといったうんちく、さらには映画『ゴッドファーザー』でシチリア・マフィアがおみやげにもらうお菓子や映画『ひまわり』でソフィア・ローレンらが焼くオムレツについての解説など、料理はもとよりカルチャーや旅行までもがもっともっと楽しめるような話が満載なんです。
たとえば日本へ観光に来た外国人が、ミシュランに載ってるというだけの理由で高級料亭を訪れたら。もちろん日本料理の美しさや味わいを感じ取ってもらえるかもしれないけど、[関西人は関東のダシをけちょんけちょんにけなす]「お好み焼きは箸なんか使ったらあかん、コテで食べるもんやと大阪の昭和一ケタ生まれの庶民のおっちゃんはこだわる」といったことを知ればますますエンジョイできるはずで、これはそのイタリア版指南書=日本人向けと思うわけです。
・・・・・・
私がこの本を好きなのは、ただ「これが正しい」と断定するマナー本じゃないから。
あちこちの文献や知識人の研究結果をまんべんなくちりばめたのではなく、イタリアをこよなく愛する吉川敏明という一人の人間の考えやエッセンスが貫かれているから。
中には[偏った見方だ]と評される内容も含まれてるかもしれないけど、100パーセント異論のない無難な話なんて、あんまり面白そうじゃないもん。
とにかく知識の広さと深さがハンパじゃない。それらを裏づけるのは、豊かな経験とイタリアへの愛情。どこから斬りつけてもブシャーッとイタリア色の血がほとばしるのです。
・・・
で、じっさいにお目にかかった吉川氏はまさにイタリア人。もとい、生粋のローマ人なのだった。

専門的な話はイタリア料理に精通した河合さんらにおまかせして、ただただ吉川大明神(私はこう呼んでます)の手料理をうひうひ堪能したワタクシ。
ああ。うまい。
これぞ、これぞや。
数十年前に初めてたどりついた心細いローマの夜。やっとの思いで勇気をふりしぼって足を踏み入れたリストランテのドアの重み。市場の脂のにおい。すべてがよみがえる。




思考錯誤の末あみだされたヌーベル・キュイジーヌとはちがう、これがローマの伝統料理、というものなのでしょう。
その真の力を思い知ったのは、じつは2日後。むしょうに[大明神の料理をまた食べたい、あの味に帰りたい]と思ったのでした。
よどまぬ仕事、とどまらぬ魂。
吉川さんの仕事や料理にふれて、感じたことです。
・・・・・・
そんな[イタリア料理の生きた大辞典・吉川大明神]がまさに目の前で刻んだ玉ねぎや手打ちしたパスタを、お金さえ払えば食べられるというのが飲食業のすごいところ。
ぜひいちど、行ってみてください。大明神が生きておられる間に。
そこらへんのフニャついた若者よりよっぽどお元気とはいえ、不老不死ってわけじゃないと思うので。
もちろんその前に、本を買って読んでいくことをおすすめします。
図書館で借りるんじゃなくね(←ここはけなげな広報活動)。
・・・・・・
エスプレッソのカップは、かつての[カピトリーノ]のものが使われておりました。
エル・カンピドイオ
東京都世田谷区桜丘1-17-11
電:03-3420-7432
(営業は金・土・日・月の夜のみ。だいたい夜7時くらいから
って感じみたいです。住宅街の中の小さな丸太小屋。あくまで
も居酒屋なので服装も気分もカジュアルでOK。とはいえあま
りにも身近なところで大明神がうろうろしてるので、それが重
鎮であることを知る人にとってはカジュアル気分ではいられな
いかもしれませんがね)
・・・・・・・・・
『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』↓ 柴田書店のHPでの紹介ページ。ここからアマゾンなどへもリンクしてます。すぐ買えます。
http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=03533200
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2010年1月13日
ほほほほほほ~
今年もできあがりましたの、東京キムチ。
だから今うちの玄関をあけると・・・・
さながら「大阪JR環状線の鶴橋駅で電車の扉がひらいた瞬間」
・・・・・そんなソウルフルな芳香が満ち溢れてますの。
手作り、自家製なんですよ。これがもう、激ウマでして。

げそ、あみ、松の実、昆布、いろいろいろいろ入ってるの~♪
といっても私はあくまでも名人にちゃっかり便乗するだけで、漬け込みの準備がおおかた整えられたところへ出向いてちょろちょろっと手伝いもどきするだけなんですが(しかも今年は都合があわず結局完成品をいただいてしまった。カメだけ預けて)。
われらがキムチ隊長は、写真家で、ギャラリー・オーナーの柏原誠さん。ひょんなことからご縁をいただいて約6年、私の著書[買ってよかったモノがたり]の表紙カバー写真(きもの姿+家族の写真)も撮っていただきました。


隊長はもう20年以上も前から、ああでもない、こうでもないと、奥様とともに試行錯誤を重ねてこられたらしい。冬がめぐり来るたびに。
塩かげん 気温 白菜の塩の抜き具合 どの店で唐辛子を買うべきか 昆布の産地
何を足す、何を引く・・・・・どう寝かす・・・エトセトラ、エトセトラ
どうやらキムチ作りって、一筋縄じゃいかないようです。
つまり我々は、柏原家のキムチ作りが数十年を経て「まあまあいい感じになってきたかな」となってからの便乗組。一昨年から、まぜてもらってるのです。

東京タワーや六本木ヒルズをのぞむ柏原亭屋上で、うまみを増す増す、東京キムチ。なお、キムチ作りとはたいへん「寒い」ってことも学習しました
写真家をはじめとするアーティスト、ことに男性はうまいものを探求するエネルギーと手を惜しまない方が多いと思うんですが、いかがでしょう。
なぜだろう。
共通項はなんだろう。
モノ作りにこだわる人は、なんにでもこだわるものなのか?
でもある日、キムチとはぜんぜん関係ない話をしていたときに隊長の口から出たひとこと、そこにすべてが集約されてるような気がしたのでした。
[感動でしょう、なによりも大切なことは]
ああ、これがすべてのおおもとなんだと思ったのです。
写真をとるのも、うまいキムチを追求するのも。
うーん、やばい。すでにまっ白髪のおっちゃんに、負けてたらあかんわと思ったのでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
でもね、キムチに関してはさっさと降参しておくのです。はっきりいって隊長のキムチにかける情熱は真似できない。てゆーか、真似しようとは思わない。
だって我々は、もはや安泰なんだから。このキムチが食べられるポジションを手に入れたのだから。
それをたぐり寄せ、つかんだのは自分。私の手柄。
というわけで隊長、どうか長生きしてください。
めぐり来る冬のキムチのために。私のために。
![P1000918 柏原氏は70~80年代を中心に広告写真、ことに車の写真で一時代を築いた大御所。なんと私が高校生だった頃、雑誌から切り抜いて部屋の壁にはっていた日産スカイラインの写真も氏の作品だった(テールランプの光が流れて線を描いたような、ほかの車広告と一線を画した斬新さにしびれた)。数十年後に撮ったご本人に出会えるとは。上は[買ってよかった]カバー写真を撮影中の様子。まんまと巻き込まれてくれた。しめしめ。](http://mori-yuko.namaste.jp/blog/wp-content/upload/2010/01/P10009182-300x199.jpg)
柏原氏は70~80年代を中心に広告写真、ことに車の写真で一時代を築いた大御所。なんと私が高校生だった頃に壁にはってた日産スカイラインの写真も氏の作品だった(テールランプの光が流れて線を描いたような斬新さにしびれた)。数十年後にご本人に出会えるとは。上はカバー撮影中の柏原氏。まんまと巻き込まれてくれた。しめしめ。

「今年のもうまかったですね~」と告げたら柏原氏、「いや、甘みが足りない。漬け汁に砂糖水加えてみてよ。分量は・・・」とレクチャー開始。あかん。やっぱり負けてる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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2010年1月6日

新幹線の名古屋駅構内を走っているとき、キオスク前で自動的にブレーキがかかって、即買い。
店頭に山積みの、ピンクの包み紙。
もはや説明するまでもない-----伊勢の名物~♪ 赤福餅がええじゃないか♪---赤福餅でございます!
迷うまでもなく「2箱ください」と言わせてしまうのは、さすがにあっぱれだなあと思うのです。見たらむしょうに食べたくなるんですよね。
↑でもこれって↑、考えてみたらけっこう不思議。
だってね、大阪育ちの私は子供の頃から食べる機会が多かったわけですが、でも当時はバウムクーヘンとかシュークリームみたいな洋菓子系のほうが明らかに嬉しかったもので、赤福は「いただいたから食べる」という程度の存在だったんですもん。
むしろ無理して食べてたようなところがあると思うんですよ。
赤福餅は弾力がありすぎてヘラで上手に切れないから、仕方なく丸ごと一個を口に入れる→なかなか噛みきれない餅+地味なこしあんで口の中が支配されてモソモソ→噛んでるうちにあんこがはがれ、餅だけが口の中に残って→無理してお茶などで飲み込もうとするとつるっと流し込まれて「おうぇ~」っとなる。
ねえ。心当たり、ないこともないでしょう? つまり、子供の頃には実はおいしいと思ったことがなかったような気がするんです。なのに今は即買い。うーん、なぜだ。舌に刷り込まれた味へのノスタルジー? 名物の安心感? なんとなく買っちゃうだけの惰性?
で、今回あらためてまじまじ味わってみて、しみじみ感じたことがひとつ。
ああ、赤福って、なんておいしいんやー・・・・・・ということです。
子供の頃にはこんなにおいしいものだとは思わなかったんだよなあ。
さらに、パッケージもよく見るとじつに美しくて、機能的で、思った以上に凝ってるんですね。
8個入り700円の一箱にこめられた、赤福餅という世界。
じっくり眺めながら開封してるうちに、なんだかじーんとしてしまった。店頭に並んでるときの状態がもっとも美しくて、ほどいていくとただの醜いゴミになっちゃうものが多い昨今、赤福は開封するときも、食べ終わった空箱でさえ美しくて、すみずみに伊勢という地のたたずまいや風情がちゃーんと感じられる。名物の気品と心と、おみやげをもらった側がわくわくする仕掛けがある。


伊勢本店がプリントされた薄紙に、ふたの「赤福」の文字が透けて見えるようにセッティングされている。こんな細かい演出、気づいてました? 私は今回初めてじっくりながめてわかりました。
おみやげが「けっきょく赤福」になっちゃうのは、「やっぱり赤福」の根拠があるから、ということですなあ。

私が就職して初めての仕事は、JTBるるぶ『伊勢志摩』の取材+執筆でした。なつかしいなあ。そのとき本店の方に聞いた話→「赤福はすべて手作り。あんこの表面の凸凹は握った人間の指のあとで、お伊勢さんの五十鈴川のさざなみを表現してるんですわ」。。。ちなみに関西人のソウルフードともいえるおにぎりせんべいのマスヤは、赤福の社長が作った会社なんですのよ。
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2009年11月23日
実はわたくし、じゃがいも料理のバリエーションがあまり多くないのです。
理由は自分でもわかっております。
世界一おいしいじゃがいもを食べているせいざんすよ。
北海道は苫前町の関哲男さんが生産するじゃがいも。
品種は北あかり。黄色くてみっちり濃い。
とにかく、うまい。
近所のスーパーで買ったじゃがいもだって、ちゃーんとおいしい。
でも関さんのじゃがいもはなんというか、しみじみおいしいのです。あえて形容するならば、体と心が丸ごと「あああっ」と、ほっこり幸せになる味。
北海道の義兄夫婦が、いつも送ってくれるのです。
親戚になってからだから、かれこれ15年。
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その義兄ってのが、貫田桂一(ぬきたけいいち)という男でして。
もと料理人で、現在は北海道で「食のプロデューサー」なる肩書きで、地産地消や食育に関する仕事をしている。(謎の肩書きですな。ひとのことは言えんけど)
かつて札幌の「ホテルクラビーサッポロ」で料理長を務めていた彼のポリシーは、
「食材は北海道内のいいものだけを選びその味を活かす」
厨房を飛び出して、畑へ、海へ、山へ。
生産者と会い、土や水の味と匂いに触れて、「これやー!」というものと出会うことから、彼の料理は始まったのでした。
たとえば畑に生えてる野菜をズボッと抜き、さっと手でぬぐったら、その場で皮ごと・土ごとムシャムシャほおばっては「うまーい!」。
川にザバザバ入っていって水を口に含んでは、「甘―い! ここで育った魚はこのように料理すればきっとうまい!」なんて叫んじゃう。
(そのような彼の特性を肯定的に受け取ってくれる方が多く、生産者の方たちとの信頼関係につながっているのも素晴らしいのですが、親戚になった当初はそりゃあぎょっとしたものですよ。泥だらけの野菜を抱いて「ああ、この土の香りは・・・」って遠~い目になっちゃったりするんだから。なお、最近はエキノコックス症感染への懸念から、そのような行動については公言せぬよう自粛してるらしいですが)
「その作物が育った土や水の香り、生産者の気持ちが、最高の調味料なんだよね」が口癖。
そんなアニキが惚れ込んだのが、関さんの北あかりというわけです。
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ふかして塩だけ、が、当然うまい。
でも煩悩全開の我が家流の食べ方は・・・・・・↓

青森産のにんにくをごろり。中国産より値段がはるかに高いけど、こればかりは、こればかりは

塩。ぜったいにこれ。自然海塩「海の精」

オリーブオイルでじゃーっと炒めて、黒胡椒

うぎゃー
ほかの料理法、思いつくわけないでしょう。
ねえ。
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関さんのじゃがいもを扱っている、
札幌の安心野菜専門店「アンの店」↓ 通販あり。
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興味ある方は、貫田桂一が北海道の大地を歩き回って出会ったイチオシの食材と、生産者さんの話、それをおいしく食べるレシピと、買う方法の情報を集めた本
「北の料理人」
「北の料理人Ⅱ」
を、ぜひご覧になってください。身内ってこと抜きにしても、おすすめ。
http://www.shobunsha.co.jp/bibliotheca/living/living_04.html#ki_06
この本、出版社もアニキも「全国の人に北海道のおいしいものを伝えたい」という思いで作ったのに、ふたをあけたら北海道内での評判がすこぶる高く、札幌の紀伊国屋書店で売り上げ一位になっちゃったこともあるんだと。
へええ、でしょ?
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2009年9月11日
森優子のブログへようこそ!
21世紀という時代にしがみつくべく、ついにHPとブログを開設いたしました。
海に漂うくらげのように。
何の役にも立たないような、でもしっかり生きてるぜ!という静かな主張を込めながら、ゆらゆら楽しく語ってゆきたいと思うのです。どうか気長にお付き合いください。
さて記念すべき初回は、お祝い→赤飯→あずきという、若干無理くりな根拠をこじつけて、「ヤマザキパンの薄皮つぶあんぱん」をリスペクト。
絶妙の塩加減。
上の歯と下の歯が薄皮をつき破って再び出会うとき、口の中には「これぞ黄金比率」と思える配分のつぶあんとパン生地が。
「つぶあん、うまい。あんぱん、えらい」
素直にそう思わせてくれる逸品だと思うのですが。
5個入りで130円前後。
ひとくちだけ、という衝動のちょうどよい着地点。食べても罪悪感(贅沢しちゃったとか、また太るーとか、夕飯がおいしくなくなっちゃうなどの「あーあ」)がギリギリわかないこの感じ。
私がスーパーに行く時間帯に、「30円引き」シールがついてることが多いことも含めて、愛しております。