091212_2215~01091212_2217~01swiss3swiss2091210_0130~01091210_0117~01 (2)

スイス在住の社会学者Yさんが毎年送ってくれる『スイスあほTシャツ』。最新作は、EU旗の真ん中にスイスをあしらった「Don’t disturb…邪魔しないで」。EUに加盟せず独自路線を貫くスイスをばっちり表現してますなあ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 以前、ここで『ヨーロッパの国名をいくつ言える?(三分間で)』という話を書きました(→http://mori-yuko.namaste.jp/blog/?p=308 )

娘の中学校で、社会科の先生が「三分間でヨーロッパの国名をできるだけたくさん書き出しなさい」と出題。多くのクラスメイトは7~20カ国、うちの娘は32カ国書き上げた(間違いも含む)、という話題でした。

でね。それを読んだスイス在住の社会学者Yさんが、たいへん興味深い指摘をしてくれたので、紹介したいと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 「娘さんが三分間で32カ国も書いたのはすごいですね。でも・・・」

でも?

「『ヨーロッパの国名をいくつ言える?』というのは、ヨーロッパの学校の授業ではあり得ない出題ですよ」

えーっ!? そうなの? なんで?

「どこからどこまでをヨーロッパとするかの定義や、国家の定義が、民族や立場や個人によって異なるからです。少なくとも、多種多様な民族をルーツとする学生が集まる都会の学校ではぜったいに無理ですね。ケンカになっちゃいます」

 へええ。目からウロコではありませんか。複雑な歴史や民族間感情など、ややこしそうだなーとは思ってはいたけど、こんな質問さえタブーとは・・・知らなかったぞ。

 もし仮に、ロンドンの中学校でこれが出題されたとしたら、たとえば「スコットランドをひとつの国としてあげるのはおかしい」「いや、人口が500万人もいて独自の司法制度もあるんだから立派な国家だってパパが言ってた。たかだか人口3万人のサンマリノが国家と認められてるわけだし」といった国家の定義論に始まり、どこからどこまでをヨーロッパとすべきかの議論が火花を散らす。ようするに正解がない、ということなんでしょうね。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 でも、ヨーロッパとか、アジアっていう言葉はちゃんとあるわけでしょ。

一般的な[ヨーロッパの定義の基準]ってものはないのでしょうか?

しかしどうやら、いずれの分け方をしても、なんらかの不具合や論争が生じるようで。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以下、森の勝手なイメージによる展開です。

誰かが↓このような意見を言ったとする。 

europe5

 

すると地理的にはアジアとされるグルジアについて反論が・・・

europe8

宗教文化的にはグルジアはヨーロッパだと。

すると、「イスラム教国であるトルコはヨーロッパじゃないって? 聞き捨てならん」ということになって・・

europe3

 

いっぽう、こんな意見も・・・・europe2

でもすぐに懸念がもちあがる。 

europe1

 

こんな展開になりかねない。泥沼というわけですな(あくまでもイメージねイメージ)。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

うわあ、ややこし――――――っ!

ややこしすぎるぞ、ヨーロッパ!!

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちなみに日本の社会科の副読本には、『ヨーロッパ=47カ国(2010年現在)』というふうに、はっきり区分と国数が記載されているけれど、それはあくまでも日本政府の解釈が基準であって、ヨーロッパの学生が使う副読本ではそんな記載さえあり得ないそうな。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 Yさんは言う。

「ぼくはですね。娘さんがたくさんの国名を書けたことより、むしろ間違えたことのほうが重要だと思うんです(注・娘があげた中には日本の教科書ではヨーロッパとされていないグルジアやアゼルバイジャンが含まれていた)」

というと?

「日本の受験偏重型の教育では、名称や年号や数などの知識が重視され、ロジック(論理)が抜け落ちてしまいがちです。もちろん知識も大事ですが、なぜその国をヨーロッパと定義するのか・しないのかを考えることが本来は重要だと思うんですよね」

なるほど。間違いと指摘されることで、娘は「なぜグルジアがヨーロッパじゃないのかなあ?」って考えるようになるってわけですな。

「そうです。ちなみにヨーロッパの学生はロジックばかりに偏って、肝心な基礎知識が入ってないことが多くて、それはそれで問題なんですけどね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

『ヨーロッパの国名をいくつ書ける?三分間で』は、私はとても面白い有意義な課題だと思ったし、あくまでもヨーロッパの社会科の授業ではタブーという話なのですが。

いずれにせよ、この課題が出されて生徒同士でケンカにならないのも、保護者から苦情がでないのも、日本が平和ってことかもしれないね・・・・と話し合ったのであります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そう言われてみれば・・・

台湾は国か? 北朝鮮は? バチカン市国は?

即答できるかというと、あやしいもんです。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

さて、質問です。これはどこのおみやげでしょうか?(Yさんみやげのひとつ)

さて、質問です。これはどこのおみやげでしょうか?(Yさんみやげのひとつ)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※ブログにコメントを書き込んでいただけるようになりました!ただし各回の題名(オレンジ色のタイトル部分)をクリックしてもらわねば投稿フォームがでないのです。すいません。追って改善します。どしどし書き込んで下さいね)

※ホームページに工事中の箇所が多くて申し訳ありません。執筆者への連絡は、出版社経由、あるいは下記へメールにてご連絡ください(個人的なご質問・お便りなどは申し訳ありませんがご遠慮ください)。

momomo(@)cd5.so-net.ne.jp

注↑上のアドレスからメールを送信する場合は@の前後のカッコをとってください。

esc108esc102esc103

紙と鉛筆をご準備ください。ここで問題です。 

さーて、あなたはヨーロッパの国名をいくつあげられますか? 

地図や本は見ちゃダメ。制限時間は3分。よーい、ドン!

ほれ、書き出してみて、ほれほれほれ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

はいっ、お疲れさまでした。結果はどうでしたか? 思ったよりスラスラ出なくて愕然としたんじゃないですかね? うしししし。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

娘(中一)の社会科の授業で、先生からいきなり出題されたんだそうです。

最新の地図帳でヨーロッパとされているのは45カ国。「でもまあ、10カ国あげられたらいいほうだよ。20カ国なら大したもの」とのこと。

クラス中から「イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、スイス、イタリア…」「えーっ、あとはわかんないよ~」という唸り声が次々とあがり、だいたい7~10カ国でギブアップしたクラスメイトが多かったようです(みんなもっと知っていそうな気がするけど、いざ自分が出題されたら、3分で思い出せるのは案外少ないということを痛感するかと)。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

で、これはずばり自慢なんですが、うちの娘が書き出したのは32カ国。

先生から「20カ国以上書き出せた人は?」と聞かれて手を上げたのはクラスで一人だけで、みんなから「す、すごい」と驚愕されたそうな。たしかにね。そりゃそうでしょうね。

 ただし、娘の答えはすべて正解ではなかったんです。グルジアとか、アルメニアとか、いわゆる世間一般的にはヨーロッパと定義されない国も混じっていたから。

「なんでそんなにたくさん知ってるの?」「なんでそんな国まで書いたの?」という疑問への答えはただひとつ。娘は『ユーロビジョン・ソング・コンテスト』という欧州の歌謡曲オリンピック(テレビ番組)の熱烈ファンだから、なのであります。

(ユーロビジョンについては以前のブログ↓ご覧になって)

http://mori-yuko.namaste.jp/blog/?p=80

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

ユーロビジョンは、欧州放送連盟(EBU)に加入している国に出場権があります。加盟国にはエジプト・モロッコといった北アフリカも含まれ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン、イスラエルといった「それってヨーロッパ?」な国の歌手も出場している。

つまり娘は地理の天才というわけでも、「さすがは旅を愛する森さんの娘だから」というわけでもなく、ユーロビジョンおたくゆえ書けた「3分で32カ国(不正解含む)」だったわけです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 おほん。さてここで。

「ヨーロッパってどんな国があったんだっけ」とイライラし始めた方のために、素晴らしい地図をご覧に入れましょう。

ほれ。ど~ん。どうです。

ほれ。ど~ん。どうです。

こういうスケールの地図、案外見たことないでしょう。(拡大して見たほうが面白いので、ぜひPCにファイルを取り込んで拡大して見て下さい)

地図帳でヨーロッパを見ると、西欧・中欧・北欧って感じでページが分かれていたり、山脈とか盆地の名前でごちゃついてわかりにくい。「もっと広範囲をシンプルに見渡したい」と思ったらいきなり全世界地図になっちゃって、ヨーロッパを国名だけで鳥瞰(ちょうかん)できる地図ってあんまりない。 

ないから作ったんですよ、私が。だから手書きなの。

EU勤務の友人がくれた地図などを参考に、しこしこ手で書き上げたのです。21世紀とは思えませんな~、ははは。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 こうしてあらためて見ると、きっとみなさんそれぞれに「へえ」「そうだっけ」といった発見や驚きがあるんじゃないでしょうか。

(フランスとスペインの間にアンドラなんて国あったの?とか、イタリアの中にバチカン市国があることは知ってたけどサンマリノなんて知らんぞ、とか。スコットランドって国はなかったんだっけ?とか)

 もちろんこの地図に入っている国すべてがヨーロッパというわけではありません。また「ここには国境を入れるべきだろう」「これを国と認めていいのか」といった突っ込みどころも満載だと思います。

 たとえばキプロス。この地図ではざっくり「キプロス」としてあるけど、じっさいの行政区や人々の暮らしは南と北に分かれていて、これをいくつの国と数えるべきかは解釈や立場によって異なるのが現状のようです。

ユーロビジョン大会会場で見た、ギリシャの応援団は、横断幕でギリシャとキプロスの友好関係をアピールしてた

ユーロビジョン大会会場で見た、ギリシャの応援団は、横断幕でギリシャとキプロスの友好関係をアピールしてた

 コソボもしかり。日本では一応、「昨年2008年2月にセルビア共和国から独立した国」という認識が一般的だし、日本の教科書や地図帳では「コソボ共和国」としてしっかり国境が記されています。

でも現在、コソボを共和国として承認しているのは国連加盟192国のうちの62カ国。それにセルビア政府はコソボの独立を認めていないので、セルビアの地図上では『コソボ共和国』という国は、じつはまだ存在しないんですよ。

セルビアのバス車内で見かけたポスター 同盟国による意見広告『私たちは賛同する、コソボはセルビアだ』

セルビアのバス車内で見かけたポスター 同盟国による意見広告『私たちは賛同する、コソボはセルビアだ』 )

私はたまたまセルビアの歌手マリヤちゃんに惚れ込んだから知るようになったけど、ふつうにテレビや新聞を見てるだけでは、おそらく知らなかったと思うんですよね。 

そもそもヨーロッパの定義ってよくわかんないし。ロシアはヨーロッパなのか?とか。トルコはEUに入りたがってるけど、EUの加盟条件って何?とか。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんだか小難しい話になってしまったけれど、要するに、世界のことって知ってるようで案外知らないものかもね、ということ。そして、女子中学生に見る『好きこそものの上手なれ=ミーハーの底ぢから』の好例、という話でした。 

(娘はこのエリア以外で出題されたら撃沈と思われます。あと詳しいのはインドの芸能情報ぐらいか)

EU加盟国を塗ってみました(2009年現在同)。ノルウェーとアイスランドが加盟してないって意外でしょう? さらにEUの中でもユーロ€導入してる国としてない国、わかります~?

EU加盟国を塗ってみました(2009年現在同)。ノルウェーとアイスランドが加盟してないって意外でしょう? さらにEUの中でもユーロ€導入してる国としてない国、わかります~?

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ちなみに噂では、ユーロビジョンとほぼ同じルールやシステムを基にした、「アジア・パシフィック・ソング・コンテスト」なるものが、もうじき開催されるようですよ。

そのわりには具体的な情報が聞こえてこないけど。シンガポール、インドネシア、日本、中国などアジア15カ国が出場予定とか。

日本の代表歌手は誰になるかな。社会学者の友人は『アジアで知名度の高い、谷村新司か五輪真弓が出たら、他国から高得点を得られるのでは』と言っておりますが。それが開催されたら娘はアジアの国々にも強くなれるか?

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※ブログにコメントを書き込んでいただけるようになりました!ただし各回の題名(オレンジ色のタイトル部分)をクリックしてもらわねば投稿フォームがでないのです。すいません。追って改善します。どしどし書き込んで下さいね)

※ホームページに工事中の箇所が多くて申し訳ありません。執筆者への連絡は、出版社経由、あるいは下記へメールにてご連絡ください(個人的なご質問・お便りなどは申し訳ありませんがご遠慮ください)。

momomo(@)cd5.so-net.ne.jp

注↑上のアドレスからメールを送信する場合は@の前後のカッコをとってください

森優子 著者近影

森優子 もりゆうこ/Yuko Mori

旅行コラムニスト/イラスト・エッセイスト。1967年大阪生まれ。大阪芸術大学美術学科卒

学生時代、サハラ砂漠を歩いているときに出会った人物にスカウトされて上京、ガイドブックの編集事務所に就職。93年独立、イラストを含めた執筆活動をスタート。ユーモラスで地に足の着いた旅行術&生活術は、「そうそう」「あるある」「なるほど」という多くの共感を読者から得ている。現在は東京都内にて中学生の娘・夫との三人暮らし。訪れた国は約40カ国。

森優子の最新著作

買ってよかったモノ語り 表紙

買ってよかったモノ語り

晶文社 1,500円(税別)