チェックのシャツのハイカラなオヤジさん(もといナイス・ミドル)は、イタリア料理通で知らぬ者はいない大御所、料理人の吉川敏明さん。柴田書店「専門料理」元編集長でフリー・エディターの河合寛子さんと、原稿の最終チェック中。ツーと言えばカー。というより、ツーと言えばカーカーカーと返ってくるのを河合さんがカーに凝縮する、見事なまでのリレーションシップ。

チェックのシャツのハイカラなオヤジさん(もといナイス・ミドル)は、イタリア料理通で知らぬ者はいない大御所、料理人の吉川敏明さん。柴田書店「専門料理」元編集長でフリー・エディターの河合寛子さんと、原稿の最終チェック中。ツーと言えばカー。というより、ツーと言えばカーカーカーと返ってくるのを河合さんがカーに凝縮する、見事なまでのリレーションシップ。

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グルメではないが食べることは大好きな私にとって、「食の総合出版社/柴田書店」は憧れのアイコン的存在の出版社でありました。

それはもうずっと、初めて包丁をにぎって料理を覚え始めた大学時代から。

ノンノの[彼氏が喜ぶ手料理特集]でもなく、アンアンの[女ともだちと楽しむエスニック風ブランチ]でもなく、パリッとのりのきいた白衣をまとった料理人が数秒のタイミングに集中して火を入れるプロの世界=柴田書店の刊行物。料理業界の哲学・美学はもとより、掲載されている広告にさえ「うぉぉプロフェッショナル!」と、いちいち感じ入ったものでした。

でも考えてみたら、料理人を目指したわけでも一流店を食べ歩く財力もなかったのに、なんで私は柴田の本をちょくちょく買ってたんだろう。

そうか。酔いしれたかったんだな。
[わたくし、柴田の雑誌をレジへ持っていくんですの][部屋の本棚に柴田の本がささってますの]な自分に。

でもまあこんな愚かな購読者層もいてこそ、柴田書店の柱の一本や二本は立ってるんじゃないかと開き直るのであります。

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そんな柴田書店さんから仕事のオファーを頂いたのが数年前(嬉しかったあ)。
そして今回久しぶりにイラストを描かせてもらったのがこれ↓

『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』(吉川敏明・著/柴田書店/税別1600円)

『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』(吉川敏明・著/柴田書店/税別1600円)

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へっへっへ、みなさま。はっきりいって超面白いんですよ、この本。

もちろん自分が関わったという贔屓目は20パーセントくらい入ってはいるんですが、残す80パーセントは読者目線からおすすめするのです。
著者の吉川氏は、西麻布の伝説的有名店『カピトリーノ』の元オーナーシェフ。現在は小田急線の経堂で『エル・カンピドイオ』という小さなイタリア居酒屋を奥様ときりもりしておられる。

1946年生まれ。ローマで数年間修行して帰国したのが1969年ということは、まだ日本人は喫茶店のケチャップ味のナポリタンかミートソースしか知らなかったような時代。吉川氏はそんなころから本物の現地の味を、おいしさを、日本にもたらしていった先駆者なんですね。
講演会や著述活動にも力を注いできた吉川氏。著書『イタリア料理教本(上・下/柴田書店)』は発刊以来、若き料理人のバイブル的存在となっているそうな。

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それにひきかえ。
私にとってのイタリア料理は「おいしい~」か「はあ、こんな感じですか」の二種類で、専門知識なんてないに等しい。
だから柴田書店の編集者・網本祐子さんから今回の仕事の打診を頂いたときは、正直に白状したのです。

「あのー、私、イタリア料理についてぜんっぜん詳しくないんですけど」

さらに↓

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すると網本女史、ひとこと↓

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こう言わせりゃ、こっちのもん。

というわけで原稿を読ませていただいたのです。

それがまあ、面白いのなんのって。目からウロコの連続。

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パスタを食べるときにスプーンを添えてクルクルするのは、えええっ、田舎もの?
(やってました)

パンにオリーブオイルをつけて食べるのは、貧乏人?
(喜んでやってました)

エスプレッソをダブルで頼むのは野暮?
(お茶室で抹茶を[ダブルで]と言うに等しいんだってえええ…???)

・・・といった知ってるようで知らない作法に始まり、よりスマートな楽しみ方、地域によるアルデンテの違いといったうんちく、さらには映画『ゴッドファーザー』でシチリア・マフィアがおみやげにもらうお菓子や映画『ひまわり』でソフィア・ローレンらが焼くオムレツについての解説など、料理はもとよりカルチャーや旅行までもがもっともっと楽しめるような話が満載なんです。

たとえば日本へ観光に来た外国人が、ミシュランに載ってるというだけの理由で高級料亭を訪れたら。もちろん日本料理の美しさや味わいを感じ取ってもらえるかもしれないけど、[関西人は関東のダシをけちょんけちょんにけなす]「お好み焼きは箸なんか使ったらあかん、コテで食べるもんやと大阪の昭和一ケタ生まれの庶民のおっちゃんはこだわる」といったことを知ればますますエンジョイできるはずで、これはそのイタリア版指南書=日本人向けと思うわけです。

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私がこの本を好きなのは、ただ「これが正しい」と断定するマナー本じゃないから。
あちこちの文献や知識人の研究結果をまんべんなくちりばめたのではなく、イタリアをこよなく愛する吉川敏明という一人の人間の考えやエッセンスが貫かれているから。
中には[偏った見方だ]と評される内容も含まれてるかもしれないけど、100パーセント異論のない無難な話なんて、あんまり面白そうじゃないもん。

とにかく知識の広さと深さがハンパじゃない。それらを裏づけるのは、豊かな経験とイタリアへの愛情。どこから斬りつけてもブシャーッとイタリア色の血がほとばしるのです。

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で、じっさいにお目にかかった吉川氏はまさにイタリア人。もとい、生粋のローマ人なのだった。

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専門的な話はイタリア料理に精通した河合さんらにおまかせして、ただただ吉川大明神(私はこう呼んでます)の手料理をうひうひ堪能したワタクシ。

ああ。うまい。
これぞ、これぞや。

数十年前に初めてたどりついた心細いローマの夜。やっとの思いで勇気をふりしぼって足を踏み入れたリストランテのドアの重み。市場の脂のにおい。すべてがよみがえる。

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思考錯誤の末あみだされたヌーベル・キュイジーヌとはちがう、これがローマの伝統料理、というものなのでしょう。

その真の力を思い知ったのは、じつは2日後。むしょうに[大明神の料理をまた食べたい、あの味に帰りたい]と思ったのでした。

よどまぬ仕事、とどまらぬ魂。
吉川さんの仕事や料理にふれて、感じたことです。

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そんな[イタリア料理の生きた大辞典・吉川大明神]がまさに目の前で刻んだ玉ねぎや手打ちしたパスタを、お金さえ払えば食べられるというのが飲食業のすごいところ。
ぜひいちど、行ってみてください。大明神が生きておられる間に。
そこらへんのフニャついた若者よりよっぽどお元気とはいえ、不老不死ってわけじゃないと思うので。
もちろんその前に、本を買って読んでいくことをおすすめします。
図書館で借りるんじゃなくね(←ここはけなげな広報活動)。

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エスプレッソのカップは、かつての[カピトリーノ]のものが使われておりました。

エスプレッソのカップは、かつての[カピトリーノ]のものが使われておりました。

エル・カンピドイオ
東京都世田谷区桜丘1-17-11
電:03-3420-7432
(営業は金・土・日・月の夜のみ。だいたい夜7時くらいから
って感じみたいです。住宅街の中の小さな丸太小屋。あくまで
も居酒屋なので服装も気分もカジュアルでOK。とはいえあま
りにも身近なところで大明神がうろうろしてるので、それが重
鎮であることを知る人にとってはカジュアル気分ではいられな
いかもしれませんがね)

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『ホントは知らないイタリア料理の常識・非常識』↓ 柴田書店のHPでの紹介ページ。ここからアマゾンなどへもリンクしてます。すぐ買えます。

http://www.shibatashoten.co.jp/detail.php?bid=03533200

 

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※ホームページに工事中の箇所が多くて申し訳ありません。執筆者への連絡は、出版社経由、あるいは下記へメールにてご連絡ください(個人的なご質問・お便りなどは申し訳ありませんがご遠慮ください)。

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うちではコピー機をリースしてるので、月に一回、営業兼エンジニアーがメンテナンスに来てくれます。

メンテナンス中は私は仕事ができないので、つかず離れずで世間話なんかをするのですが、担当者の一人・ジョニー(仮名)が先日こんなことを言っていたのです。

「ぼくは読書が好きなんですけど、必ず、違う種類の2冊を同時進行で読み進めるんです」

要するに、通勤電車ではA、自宅ではB、翌日の出勤時はB、帰りの電車ではA・・・・という感じらしい。

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えええ。なんでわざわざそんなことを?!

私だって資料を何冊かあっちゃこっちゃ同時に開くことはあるけれど、自分の楽しみとしての読書ではあり得ない。

彼に言わせれば、「僕の場合は必ずこのパターンです。ストーリーや内容がこんがらがったりはしませんよ」とのこと。

「わからん。なんでわざわざそんな読み方するのか」と聞いたら、返ってきたのが↓この答え。

「血液型がAB型だからじゃないでしょうか」

あのー、みなさんはどう思われますか?

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ご存知の方も多いでしょうが、グレゴリ青山は漫画家。男みたいな名前ですが女性です。念のため。

大っ好きなんです。そしてこれは自慢ですが、私はおそらく誰よりも早い時期にファンになった人間だと思います。彼女がまだ漫画家として本格デビューする前からなので。

そして縁あって友だちとしてのつきあいが始まってかれこれ13年。へへ。いっしょにお風呂にも入ったことあるんやでえー。グレちゃんがいま愛用してるペンは私が教えてあげたんや。へへへ。

新刊の話。

『田舎暮らしはじめました ~うちの家賃は5千円~』 グレゴリ青山/メディアファクトリー/950円+税

『田舎暮らしはじめました ~うちの家賃は5千円~』 グレゴリ青山/メディアファクトリー/950円+税

かつて東京に暮らしていたグが、いきなり和歌山のど田舎に引っ越したのがかれこれ7~8年前。4年半の和歌山秘境暮らしを中心に、現在の京都近郊の片田舎に至るまでの、グ夫婦の田舎暮らしが描かれた漫画なんです。

田舎暮らしの本といっても、いわゆるロハス本とは一味ちがうんですわ、これが。 

だってそもそも彼女が田舎暮らしを始めた理由ってのが、「自然の中で暮らしたい」とか「都会のコンクリートジャングルで人間が忘れかけた何かを求めて・・・」とゆーのではなく、ずばり、

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 ↑・・・・・・「そして月5千円という家賃の安さに目がくらみ、特に深い考えもなく引っ越した(本人談)」、だったのでね。

「ええ~っ!?ええんかそれで?」とツッこみたくなるような理由ですが、でもまてよ、そういえばこれってけっこう説得力ある動機と思いませんか。

「とれたての自家製の野菜のおいしさ♪」とか「小鳥の鳴き声で目が覚めること」よりも、「家賃が安い」という要素のほうがよっぽどストレートに「うらやましいー!」「共感できるー!」と思いますもん、少なくとも私は。

とはいえ実行できない。それを実行しちゃったところがグレちゃん夫婦の特殊性・希少性であり、『へええええ・・・』と感心するやらあきれるやらな部分なんですが、でもグ夫婦は勤め人ではないから物理的には可能だったわけで、あながち無鉄砲というわけでもないんですね。

私はこの本が、「田舎暮らしのあくまでも一例」というスタンスで描かれている点がたいへん気に入っています。

ナチュラル・ライフを礼賛するわけではなく、田舎暮らしなんてやめときなさいと警告するわけでもなく、グレゴリ夫妻の田舎での暮らしがたんたんと描かれている。

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たまにあるじゃないですか。いいことしか言わない、ナチュラル・ライフ礼賛記事。「大自然こそが子供にとって真の先生」とか「星空を眺めながら飲むビールはお金で買えない」みたいな。そのあとに、「そりゃあ大変なこともありますけどね(笑)」といったセリフが一応ついてるけど、それには詳しく触れないような。

嘘はないにしても、「本当にそれだけ?」と思っちゃう。「そりゃあ大変なこともありますけどね(笑)」の、「(笑)」に、じつは笑い飛ばせないことも含まれてるんじゃないか、田舎暮らしの本質と本音がそこに封印されてるんじゃないか、と。

(じつは地元の人からいじめられてますとか、じつは後悔してますとか、雑誌の取材で言えないよなあ、親の反対を押し切って会社を辞めて田舎に引っ越した人もいるだろうし・・・とは思うのですが)

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その点、グレゴリ青山の『田舎暮らしはじめました』は、いぶかしみようがありません。

「ぎゃあー、気色悪い虫ー、いややあああ」

「へび出たあああ」

「肥やし、くさああああああ」

「ひさびさに出ると都会って・・・・うわああああ」

「花、咲いたあああああ」

グが暮らす場所が田舎に移っただけの普通の暮らしなんだけど、田舎だからこそ生じるさまざまなトホホやオホホがあって、それらがひじょーに素直にたんたんと書かれているからです。

言ってみればモチーフが田舎暮らしの、グレゴリ青山のコミック・エッセイというだけ。グ本人もあとがきで「田舎暮らしに何のキョーミもないという人は、一種の旅行記として読んでくだされば」と書いています。

でも、なぜでしょう。田舎暮らしの「一例」にすぎないこの本に、かえって田舎暮らしのエッセンス(本質)みたいなものを感じてしまうんです私は。

 

ちなみにグレゴリ夫婦。ふたりとも町育ちなので、じつは「虫が大の苦手 見るのも触るのもいや」なんだそうです。

そのくせ田舎に引っ越したって・・・・・

家賃が安かったからって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あんたらなあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ぜひお読みくださいな。

じつは私、グレゴリ作品にはたびたび登場しています。私のことを知らない人から「もしかしてグレゴリさんの漫画にちょくちょく出てくる方ですか?」と言われることもあります。新刊でも探してみてねん。

じつは私、グレゴリ作品にはたびたび登場しています。私のことを知らない人から「もしかしてグレゴリさんの漫画にちょくちょく出てくる方ですか?」と言われることもあります。新刊でも探してみてねん。

田舎暮らしの本で、私がもっとも好きな絵のひとつ。(グレちゃん勝手にのせたで ごめんやで)

田舎暮らしの本で、私がもっとも好きな絵のひとつ。(グレちゃん勝手にのせたで ごめんやで)

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↓ちょっと古いけど、私がWEB上でグレゴリ青山の本を紹介した記事

http://www.citywave.com/moriyuko/050119/main.html

↓めったに取材を受けないグの、貴重なインタビュー記事(聞き手=森)。ずいぶん前の記事なのに、グレゴリ青山を知る情報源としていまだに各方面から重宝されておるようです。

前編 http://www.citywave.com/moriyuko/050202/main.html

中編 http://www.citywave.com/moriyuko/050216/main.html

後編 http://www.citywave.com/moriyuko/050302/main.html

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※ホームページに工事中の箇所が多くて申し訳ありません。執筆者への連絡は、出版社経由、あるいは下記へメールにてご連絡ください(個人的なご質問・お便りなどは申し訳ありませんがご遠慮ください)。

momomo(@)cd5.so-net.ne.jp

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森優子 著者近影

森優子 もりゆうこ/Yuko Mori

旅行コラムニスト/イラスト・エッセイスト。1967年大阪生まれ。大阪芸術大学美術学科卒

学生時代、サハラ砂漠を歩いているときに出会った人物にスカウトされて上京、ガイドブックの編集事務所に就職。93年独立、イラストを含めた執筆活動をスタート。ユーモラスで地に足の着いた旅行術&生活術は、「そうそう」「あるある」「なるほど」という多くの共感を読者から得ている。現在は東京都内にて中学生の娘・夫との三人暮らし。訪れた国は約40カ国。

森優子の最新著作

買ってよかったモノ語り 表紙

買ってよかったモノ語り

晶文社 1,500円(税別)